(―1―)


灰色の壁に切り取られた四角い青。季節によっては時折その隅に僅かに揺れる緑が覗く。

それだけが唯一の、外界との接点。

手を伸ばせばすぐに届きそうなほど近くに在る。



けれど、遠い。

遠い世界――









「もう行くの?」

窓辺でパン屑をついばんでいた小鳥が頭をあげ、羽を軽く震わせる。

小さな頭を一度傾げると、小枝のように細い足で、たどたどしくもしっかりとした歩みで窓際へ移動して、次の一瞬には羽音だけを残して飛び去った。

あんなに小さな体。

あんなに細い足。

人の手に握られてしまえばあっというまに死んでしまうだろうと容易に想像できるほどに頼りない存在。

けれど、自分はそれにすら劣る。

体は大きくとも。

自分の体を支えることのできる足をもたない。

自在に動かすことの出来る腕も持たない。