「ルシフェル……」
その名を呟いたきり、ファーレンは硬直してしまった。
あんな力を見せ付けられた直後だ。本能的に身体がそれに近づくのを拒否しているのか、動かそうと思えど足が動かない。
その声はきっと彼女にも聞こえただろうに、ルシフェルは振り返ることなく足元にうずくまるウリエルを見下ろしている。
その手に握られた大剣から薄らと立ち昇る青白い光は、先ほど城壁の上で見た光と同じ色。
あの恐ろしいほどのエネルギーを放った光と同じ色を纏った剣の先がすう、とウリエルへ向けられる。
「あ……」
ゾクリと背筋を震わす感覚が声を漏れさせた。
背中しか見えないから表情は伺えないが、ルシフェルの様子がはじめ見た時と違って感じる。
(まさか……壊れた……のか?)
以前ウリエルの術にかかった兵士達の姿が目に浮かぶ。
精神を破壊され自我を失ったディラハン兵の、生きながらにして抜け殻のようになってしまった姿。
そして、ルシフェル自身が失踪した時の話を思い出す。
そうだ、彼女は一度暴走している。

