瞬時に状況を把握し、ファーレンは笑みを浮かべたまま頷いた。
「いける」
意識が飛んでも手放さなかった、自らの分身とも言える槍を握る手に力を込める。
幸いなことに崩れ落ちていく城壁の下半分は、未だちゃんと壁として、その姿を留めていた。
目前に迫るそれを見据え、旨くタイミングをはかる。
勢い良く落ちているはずなのに、不思議なもので。まるで時間の流れが変わったかのようにゆっくりと移動してゆく景色。
傍目で見るよりも、実際に落ちている人間はその時間を長く感じるというが……どうやら本当だったらしい。
難なくその瞬間を捕らえる。
ゴリ、と硬い表面を削る確かな手応え。
激しい摩擦が産み出す振動が手から伝わり身体の芯まで響く。
少しでも気を抜けば、その振動に振り切られてしまう。
落下の勢いを削ってくれてる槍の柄から手を離してしまいそうな衝撃にファーレンはただただ耐える。
実際はほんの僅かな時間。
けれど、それは随分と長い間に感じられた。

