「いや、お見事。これからは仲間だ。宜しくな」
起き上がったファーレンは、頭を掻きながらアレックスへと右手を差し出した。
嫌味のかけらも見当たらないその笑顔は、家柄の良さゆえか……
新入りに負けたにもかかわらず、爽やかさ溢れる笑み。
「宜しくおねがいします」
差し出された右手には応えるもの。
アレックスは素直にその手に応え、握手を交わし。
ファーレンに続き、練兵場の壁際に立つ隊長のもとへと足を進めた。
「いや~凄いの見つけてきましたね。さすが隊長……俺ももっと頑張らないと」
先についたファーレンがそう言うのに笑顔で応えていた隊長の視線が、すぐさまアレックスに向けられた。
「心配はしていなかったけれどね。これで無事、入隊だ。後で部屋へくるように……ケルベロスの印を君にも」
「はい」
穏やかな表情で微笑む青年に、丁寧に敬礼してアレックスは出口へと向かい、体の向きを変える。
その瞬間。
そばにいた大柄な男と一瞬視線が合った。
険しい色を浮かべた眼差しで射抜く視線。
しかしそれはすぐに逸らされる。
アレックスもまた、何事も無かったかのようにそのまま出口へと視線を移す。
そして、そのままその場を後にした。

