「何言ってるんですか、戦闘が避けられるにこしたことないでしょ? 戦闘になれば人が死ぬ……大きな戦闘なら尚更」
言いながら、二つ折りの記録装置を開き、パネルの再生ボタンを押しながらファーレンが言う。
「俺は基本平和主義なんで」
ニコニコと上機嫌なその顔は、先ほどまでの睡魔はどこへいったのかと思うほど清々しい。
「ぬるいね。そんなこと言っててよく軍人やってられるね」
冷ややかにそれを見やり、ウリエルは呟いた。
ひさびさに大きな巧をたてられるチャンスをフイにした苛立ちが消えない。
ウリエルは自らこのリディル要塞への派遣を志願してきたのだ。
『いい子ね、ウリエル』
そう言って、自分に微笑みかける美しい口元を思い、やりきれない思いに捕らわれる。
あの微笑を再び得たいが為に、こんな辺境まで来たというのに。
(ディーバ様……)
ウリエルが唯一心許す、美しき王妃。

