一体何を考えてるのやら。確かにいなくていいとは言ったが、こんな時にそれを持ち出すなんて。
本当にこの男は軍務をやる気があるのだろうか?
なかばあきれて、ぽかんと口をあけて硬直したウリエルに、ファーレンはとりあえず偵察をだすことを提案し、ウリエルは渋々それを飲んだのだ。
「じゃ、頼みましたよ」
交代で仮眠を取っていた部隊の兵士を呼び出し、ファーレンが偵察に送り出して約二時間。
そろそろ戻ってきてもいいはずなのだが……
「ん?」
睨みつけるように外を凝視していたウリエルが小さく声を漏らした。
ディラハンの領地側からリディル要塞へと向かって来るひとつの人影。
何故か怯えることもなく、堂々と平地のど真ん中を横切ってこちらへ向かってくるのは……
行く時には物陰に身を潜めながら慎重に敵地へ足を踏み入れたはずの偵察兵。
その態度の変化が、嫌な予感は的中だったのだとウリエルに悟らせ、ウリエルはチッと小さく舌打ちした。

