「いえ、これくらい」
笑顔で返しながら、カウンターに据えられた高いイスを登りきったレイの隣のイスに腰を下ろしカウンターの上に紙袋を置いた。
「剥いてあげて下さい」
差し出された紙袋からアナベルが赤い果実を取り出したのを見たレイが
「わ~! プルムだ。だいすき~」
と歓声を上げる。
「あら、良かったわね~レイ。ありがとうアレックス」
アレックスに礼を言って、レイへ「ちょっと待ってね」と小声で告げてアナベルは早速ナイフで皮を剥きだした。
レイはアナベルの手の中にある果実に釘付けだ。
そんな二人を見ているアレックスの口元には自然と笑みが浮かぶ。
似ていない親子。
二人に血の繋がりはないから当然だ。
だが、そこに流れる空気はとても暖かなもので、家族というもののぬくもりはこんなものなのだろうと、アレックスはそう思わずにいられない。
アナベルとレイのいる風景は、見ていると気持ちを和らげてくれる気がして、アレックスはそんな二人を見るのが好きだった。

