足を踏み入れると同時に
――ドンッ
足元に飛び込んできた小さな影の勢いに思わず前のめりによろけそうになるのをこらえる。
「アレックおそい~」
アレックスの足にしがみついたままで幼児特有の甲高い声が恨めしげに言う。
腰ほどの高さにある小さな頭の、枯れ葉色の巻き毛をくしゃくしゃと撫でてやりながら
「レイにおみやげ買ってたんだ」
そう言うと、小さな少年は即座に顔を上げて青い目を輝かせた。
「おみやげ? おみやげな~に~?」
「ちょっと、ちょっとレイ。アレックスもちょっとゆっくりさせてあげないさいよ。それにアレックじゃなくてアレックス」
店の奥にあるカウンターの奥からアナベルの苦笑交じりの声。それを聞くと
「は~い。ママ~」
レイは素直に答えてカウンターの方へと、とたとたと駈けていく。
「アナベルさん、これで良かったですか?」
その後をついていく形で、カウンターまでアレックスも行くと、頼まれていた酒の瓶をアナベルへ差し出した。
「ええ、ありがとう。いつもごめんなさいね……この子連れてだとなかなか買い物も大変で……」
ラベルを確認して瓶を受け取ったアナベルが申し訳なさそうな笑みを浮かべる。

