店を出て行く後姿を見ながら、先ほど帽子の影から現れた顔を思い出す。
(あれは、確か……)
少し前に見た顔だった。
少女が酒を買いに来ていること自体およそ不似合いなのだが、ましてやこんなところで買い物をすること自体考えられないような相手に遭遇したことに気付く。
数日前アレックスは彼女を確かに見ていた。
華々しいパレード。
ガーフィールドの店へ行く途中、横目に見たその光景の中心にあった黒塗りの車。
その上で民衆に手を振っていた。
守護天使の少女達のうちの一人……真っ直ぐの金糸の髪の少女は、確か事前にケルベロスで見せられた資料には『ミカエル』の名前。
(守護天使が酒を?)
何故こんなところで酒なんか買っていたのだろう?
しかも先ほどの問いかけは更に意味がわからない。
(なんだったんだ……?)
意味のわからない出来事に、軽く溜息混じりに俯いて、手にしたメモを思い出す。

