アレックスの顔をよく見るためか、細い指で帽子のつばをそっと持ち上げると金糸の髪が覗く。
「……?」
じっと顔を見つめて沈黙した相手にアレックスは戸惑い首を傾げた。
ひととき、そんな間を置いて
「あなたって……吸血鬼? もしくはそんな知り合いがいる?」
「……え?」
相手が発した問いかけがまた突飛なものだったためにアレックスがきょとんとした表情になったのを見て、帽子の人物はクスリと小さく笑い
「いえ、なんでもないわ。まさかね……」
そういいクルリと背を向け、やけに重たげなブーツの音を鳴らしてその場から去っていく。
「……」
帽子と同じ色の長い外套で身を包んだその後ろ姿を見送るアレックスは眉根を寄せた。
髪を全部帽子の中に入れ込んでいたために、最初は一瞬少年かと思ったが、顔立ちといい、しゃべり方といい少女に違いない。
しかも――

