すぐに伸ばしかけた腕を引き
「すみません。先にどうぞ」
そう言って手の主の方を見れば、小さなつばのついた丸みのある帽子を深々とかぶったその人物はつま先だってる。
「……ありがとう。でも、取ってくれると助かるんだけど」
アレックスの肩のほんの少し下に見える帽子の影からやや高い澄んだ声音。
「ああ……はい。どうぞ」
言われた通り瓶を手に取り、手渡してやるとその人物は軽くおじきして
「助かったわ」
短くお礼を言った。
顔を上げた拍子に帽子の影になっていた顔が現れる。
白く細い輪郭の中に、形の良い小さな唇に、すっと通った鼻筋。その上にあるアイスブルーの目と視線が合う……と
「あら?」
その目に、少し驚いたような色が浮かんだ。

