ケルベロスの部屋を出て中央階段に向かう廊下の途中。
ふと眺めた窓の外。
司令部の中庭に人影を見つけた。
(あれは……)
思わず足を止めてその姿に見入る。
中庭に立つ青々とした葉を広げる広葉樹を見上げて立つ少女。
何をしているのか、微動だにせずじっと立ち、風に揺れる木の葉を見ている。
凛とした横顔……金の巻き毛がかかる白い頬の上にある翡翠の瞳。
(ラファエル……)
アイアン・メイデンの少女。
何故こんなところにいるのか。
血塗れた戦争のために作られたこの場所にそぐわぬ天使のようなその姿を見るたび、胸が痛む。
(こんな場所にいるべきではないのに)
王宮で、司令部で……その姿を見かけるたびにクロードはそう思うのだ。

