促されて退室したアレックスの閉めたドアを見送る。
ここ最近ぎすぎすとささくれだっていた神経が少し和らいだような気分。
だが、それも長くは持たない。
「父上……」
先ほどアレックスから受け取った届出と並ぶように置かれた封書にクロードは視線を落とした。
父……つまりは国王の容態について、かかりつけの医師が記した診断書。
容態を悪くしたリチャード王が王宮へ引きこもり、面会を許されなくなって随分経つ。
リチャード王につききりで同じく王宮に篭った義母である王妃は、昔からの側近はおろか、実子であるクロードにさえそれをなかなか許さなかった。
それでも数年前まではごく稀にではあるが僅かな時間会うことが許されていた。
とはいっても父であるリチャード王は、深い眠りについていて言葉もかわせないようなことばかりだったのだが……

