「ありがとうございます」
丁寧に頭を下げ、退室しようとするアレックスの背に
「それにしても、ほんとに珍しいな? 旅行にでもいくのかい?」
クロードの穏やかな声がかけられる。
ドアのところで振り返ったアレックスは、ほんの少し間を置いて
「ええ、人に会いに……」
やはり短く答える。
「そうかい。君にも会いたい人ができたんだ……どんな人なんだろね」
少し悪戯っぽい声音で投げられたクロードの問いに、アレックスは一瞬戸惑ったような表情を見せた。
無言で見返すアレックスにクロードは笑みを返す。
「いや、深い意味はないよ。ゆっくりしておいで」
ここ数年で随分表情が豊かになったアレックスの変化。
それを見るのが最近のクロードの楽しみでもあった。

