広範囲の気配を感知できる守護天使の眼。
それを発動させたウリエルは、異変の起こっている場所で、うごめく無数の熱源を捉えた。
慌しく動き回るそれらはディラハン兵のものだろう。
そして、そのなかで。
ひとつ……異常に速いスピードでその場をくぐりぬけるように移動していくものに気付いた。
「……あれは?」
うごめく熱源とは、また違う、異質な熱源。反応は他の熱源に比べ弱々しいものでありながら、速い動き。
それの動きに合わせるように、灯りの異変も広がっている。
正体がつかめずに首を傾げたウリエルの問いかけにも似た呟き。
だが、同じ場所を見ているものの、ファーレンにウリエルの特殊な視界が見えるはずもなく。
ファーレンも、ただただ消えてゆく灯りを眺め首を傾げるしかない。
「何が起こってるんだ?」
同じく疑問形で言葉を漏らす。
見守る二人の前で起きた異変は。
動きを止めることなく、ディラハンの野営地全体にその影響を広げようとしていた。

