不機嫌そうな表情はそのままに、でも、どこか困惑するような表情のウリエルに
「さあてね?」
笑みで返しながら。
心の中、ファーレンは首を横に振る。
怖くはない。
(君はすっかり忘れちゃったみたいだけどね……)
だって知っている。
ウリエルと自分は同じだということ……
ファーレンがウリエルと初めて会ったときのまま、変わらない彼女。
そう、変わらない。
変わらない姿で今も目の前に立つ灰色の少女。
ファーレンにとってはその姿がウリエルの真実そのもの。
ウリエルが忘れてしまったあの出会いはどのくらい前のことだったろう……
浮かべた笑みの裏側で、ひとりそんなことを考えていると
「何だ……あれ」
ぐい、と急に窓際から横に押しのけられた。

