ファーレンは以前、二、三度ウリエルと任務を共にしている。
戦場で鎌を振るい、次々と敵の首を、胴を刈って行くウリエルはまさに死神そのもの……
「呼んだ覚えはないんだけど」
一人笑いをこぼしていたウリエルが横目でファーレンに視線を流す。
その口元にすでに笑みはない。
「いや、来たくはなかったんだけど。王妃様直々の命令じゃ逆らえないし」
そう答えながらファーレンはウリエルの横を通り過ぎ、窓際へと歩み寄ると、外を覗き込む。
「夜だから見にくいけど……ずいぶん集まってるな……敵兵力は千近いんじゃないか?」
「……一人で充分だ」
「まあ、そうなんだろうけど」
不愛想なウリエルの声に、ファーレンは頭を掻きながらウリエルへと向き直った。
「一応ここは、国境の要だから。万が一でも落とされちゃ困るからね、用心にこしたことはないと思われたんだろう?」

