不意に目の前に鞘を突き出され、シルバが横に立っていることに気がついた。
「出来たよ」
「ありがとう」
皮具の取り付けが終わった鞘を受け取り、剣をしまおうと、その柄に手を伸ばそうとするルシフェルに
「君の本当の名前はなんていうの?」
シルバが声をかける。
問われた内容に、伸ばそうとしていた手が止まった。
「え?」
「ルシフェルってのは、その身体になってからの呼び名でしょう? 昔……生まれた時にもらった名前は何?」
何故そんなことを聞くのだろう?
あの名前はもう捨てたのに。
五年も前に……犯した罪に気付き、それを背負うことを決めて捨てた名前。
「生まれながらに名前にはね、不思議な力があるんだよ」
訝しげな表情で見上げるルシフェルにシルバは笑ってみせた。
「生まれた時に名づけられた瞬間から、名前はその身体の血を支配する。捨てようとも、その名はずっと君から離れることは無い。それが真実の名前……君の真実の名前は?」

