促され、ルシフェルが見上げた先で紫色の眼が笑うように半月を描く。
「僕は君が気に入ったんだ。まあ、あまり真に受けない方がいいとは思うけどね？ 魔物はうそつきだから」
「そんなことない……シルバは……」
ルシフェルは小さくかぶりをふった。
尋ねた事に答えてくれないことはあっても、シルバは嘘などついたことはない。
ずっと誠実に接してくれた五年間が嘘だとは思えない。
「もしかしたら何かたくらんでるのかもしれないよ？」
そう悪戯っぽく言い、じっとルシフェルの反応を楽しむかのように覗き込む。
そんな仕草も、自分の気持ちを和らげようとしてくれてるのだと……
その優しさが染みた。
その視線から一度目を逸らし、手にしていた剣を鞘に収め、改めてシルバを見上げる。
「ありがとう、シルバ」
心の底から……優しき魔物に礼を告げた。
