出来るだけゆっくりと、石の階段を一歩一歩踏みしめるように上る。
やがて頭上に灯りが漏れるのが見えた。
いつもシルバと食事をとる部屋。
暗い空間に浮かび上がる四角い入り口。
その明るさに目を細めたルシフェルは、一旦足を止め、大きく息を吐き、鼓動を落ち着かせる。
決意を固め、更に階段を上り入り口をくぐると
「ちょうどよかった、スープがあたたまったところだよ」
部屋の真中に置かれたテーブルを挟んだその奥で、石造りの竈(かまど)の前に立っていたシルバが振り返った。
「今日は君が好きな鳩のスープだからね」
いつもの穏やかな笑みが、チクリとルシフェルの胸を刺す。

