「人間は怖いよ……何も昔僕らの種族が滅ぼされようとしていたと聞いたからだけではなくてね」
シルバは常々そう言う。
「だって人間達は、異種族に限らず……自分達の同族も平気で殺すだろう? 今だってそうだ……昔も今も……」
人間のことを話すとき、シルバは眉をひそめて小声になる。
話すことすら恐ろしいとでもいうように。
「わたしのことは怖くないか?」
ルシフェルは一度、そう訊ねたことがある。
「君が?」
その頃にはもうシルバのところへ来て三年程経っていた。
すっかり家族同然のように接してくれるシルバ。
だが元々人間である自分に対して彼はどうしてこんなに穏やかに接することが出来るのだろう……そう思って、ふと口をついてでた。
シルバは少し首を傾げて
「そうですね……君は怖くはないですよ」
そう答えた。

