じっと目を合わせたままのルシフェルの表情が困惑から苦悩へと変わっていく。
それを見ていた魔物は、しばらく思案した後、不意にその表情を和らげた。
「此処を荒らしにきたわけではないようですね……それに……」
そう言って、ルシフェルの耳元に顔を寄せて、匂いを嗅ぐように鼻を近づけ、軽く息を吸い
「先ほど何者かと訊きましたが……この匂いは知らない匂いじゃない」
そう囁き、再び顔を離し
「よく知ってる、懐かしい匂いが混ざってます……人間ではない……」
ルシフェルに微笑んでみせる。
魔物の言わんとすることが理解できないルシフェルが首を傾げると
「まあ、いいです。行く所がないのでしょう? 僕のところでよければおいでなさい」
魔物はルシフェルへ手を差し出した。
それが、シルバとの出会い――

