DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>



探るようにじっと自分を見つめる紫色の瞳と目が合った。

「確かに人間の匂いがするが……違う匂いもする。これはどういうことだ? そもそも人間がこの森に入ることなど出来ないはずなのに……」

そう言い、狼はルシフェルの肩を押さえ込んでいた前足をどけ、数歩後退した。

「おまえは……一体なんだ? 何故結界を抜けて来れた?」

そう呟くと、ルシフェルの前でその姿を変貌させていく。

夢でも見ているかのようにそれをルシフェルはただ黙って見つめるしかなかった。

やがて、姿を人のカタチにとった狼は、困惑した表情でルシフェルを見おろすと

「抵抗しなかったのは何故ですか? あなたは此処へ何をしにきたのです?」

今度は丁重な口調でルシフェルへと訊ねた。

「……逃げて……きたんだ」

身体を起こすこともせず、ルシフェルが仰向けに倒れたまま答えると、人のカタチをした狼は身を屈め、ルシフェルの手をひいて立ち上がらせ

「何からです?」

更に問う。

その目に敵意らしきものは見えない。ただただ不思議だと……困惑する色が浮かんでいるだけ。