飛び掛ってくる自分とそうかわらぬ体躯の狼を、抵抗もせず受け入れる。 地に仰向けに押し倒され、細い、しかし力強い足で両肩を押さえ込まれても、ルシフェルは目を閉じたまま動こうとはしなかった。 眠る力が暴走する気配も感じない。 安堵に似た気持ちでその瞬間を待つ。 だが…… その瞬間は訪れなかった。 随分長い時間に感じたが、本当はほんの僅かの間だったかもしれない。 一時の静寂を置いて 「おまえ……人間か?」 そう訊ねる声に目を開く。