疲れきっていた……もうどうでもいいとさえ思えた。
一度は、その力で何かできないかなどとも考えた。
だけど、また自分を見失い暴走してしまうのではないか?
血を流す鬼神と化してしまうのではないか?
そう思えば、結局逃げることしかできない自分など、いっそ消えてしまったほうがましなのかもしれない。
森に棲む、見た事のないほど大きな、人語を話す銀色の狼。
魔物であろうか。
魔物ならば、あるいは……こんな自分でも葬ることができるやもしれない。
目を閉じ、じっとその爪に、牙にかかる自分を想像すれば……
自然と口元に笑みが浮かんだ。
これでいい……
そう……これでいいんだ……

