忌むべき悪夢のような日。
戦場から逃げ去り、己の犯した罪の大きさに打ちひしがれ……軍に戻らないことを決めた。
そして罪を償うことを……
だが、望んだとはいえ、自らが手に入れた力のあまりの大きさに……その残酷さに。
自らを恐れ、とにかく人が居ない場所へと逃げつづけてたどりついたのがこの森だった。
呪われているだとか、死を招くだといわれていることは知っていたが、それすら厭わないほどに……とにかく我が身を隠したかった。
「人間が此処に何用だ?」
突然目の前に現れた狼は、人の言葉でそう言い、キバを剥いてきた。
長い逃亡で気力を使い果たしていたルシフェルは、それに答えることもできず、ただ立ち尽くすしか出来なかった。

