しばらくこすった後、水の中から持ち上げる。

唯一光の差すその場所で姿を現した、水滴の滴り落ちる白いその腕は、泥を洗い流され……そして傷一つ見当たらない。

だが、ルシフェルにしてみればそれは醜いものにしか見えなかった。





過去に犯した過ちは消えない。





いつまでも血にまみれた記憶は薄れることなく、どんなに洗っても、どんなに時間がたとうとも……

フラッシュバックのように、こびりついた血痕がルシフェルの目には映るのだ。

「……」

黙ってしばらく自分の手をみつめていたが、やがて耐え切れなくなり、そこから目を逸らしてルシフェルは立ち上がった。

(シルバに話さなくては……)