エルカイザ南西。
不可侵とされたその森に今、足を踏み入れようとしている人影があった。
小柄な体躯。
夜の闇にまぎれるかのように黒いフードつきの外套を身に纏ったその者は、躊躇うことなく。
夜は尚更暗く、不気味な空気が漂う森へとわけいっていく。
長い年月冒されていない証かのように太い幹が立ち並び、その幹に絡みつくように鬱蒼と生い茂る蔦。
そして、低い草木の細い枝葉が方々から突き出す中。
迷うことなく僅かな隙間を縫い、はっきりとした行き先を知っているかのように、確かな足どりで進んでいく。
森の奥へと足を進めていたその人物は、しばらく進むと邪魔になってきたのか、深くかぶっていたフードを取った。
――そこからこぼれたのは
暗闇にもはっきりと浮かぶほどに……
赤い髪。

