まだ、顔を合わせるのは気が引けた。
会えば色々と話さねばならなくなってしまう……
まだこの街に戻って日が浅い。
気持ちの整理が必要だと、ジュードは思った。
ここに戻ってからというもの、やはり思い出してしまうのだ。
腕に残るかすかなぬくもりを。
花を失った痛みを。
今はただ、感謝の念を込めて古ぼけた看板に頭を垂れるしかできない。
(すまない。ガーフィールド)
閉ざされたドアを見やり、胸のうちで呟き、立ち上がる。
誰もいないのを確認して、高い建物の屋上から路上へと降り立つ。
小脇に抱えた瓶の中で、中身を減らしたキャンディーの包み紙がかさかさと擦れる音を立てた。
その音が、この街へ自分を連れ戻したもうひとりの少女を思い出させ、ジュードは自室へと帰路を急いだ。

