本当に……
人間とは……わからぬ生き物だ。
花が思い出させる、この地で目覚めて以来はじめて自分の心を溶かした小さな少女の面影とともに。
こんな自分が押し付けた無理な願いを店主が叶えてくれたことを知り、ジュードは身動きも出来ずにただただ店先を見つめたまま立ち尽くす。
「あれ……?」
そんなジュードの気配に気付き、下げ札をかけ終えた少女が振り返った。
「もしかして……お客様ですか? すみません、今夜はもう閉店なんです」
少し困ったような笑みで、ぺこりと頭を下げる。
快活そうなその声に我に返り、ジュードも笑みで答えた。
「いや、用はないんだが……すこしばかり懐かしくて」
警戒させぬよう、漏れる明かりが当たる場所まで歩を進める。
暗がりから現れたジュードを見上げた少女は、その顔を見た瞬間少しだけ驚いたように目を大きくさせて
「あれ? あれれれ?」
丸みを帯びた頬をうっすらと染めた。

