あがった陸地には先客がいた。
身を寄せ合うように、草木が生い茂る場所の傍らや、洞窟のような場所にそれらは複数で固まっていた。
話す言葉には聞き覚えがあり、理解できる。
遠目に様子を伺いながら聞き耳を立てて、何が起きたのかを知る。
自分が知らぬうちに、異常な天変地異により世界は水で覆われてしまったこと。
そして、そんな話に聞き耳を立てながら時を過ごすうちに、思い出す。
自分は彼らと変わらぬ姿を持つこと。
「もしかして……海から上がってきたのか!? ずぶ濡れじゃないか!! ささ……早くこっちへ……火にあたって暖まりなさい」
案の定、姿を見せた自分をなんの疑いも見せず迎え入れた。
「たいしたものはないが、スープでもどうだい?」
「……いや、それはいい」
「腹は減ってないのかい?」
目の前で不思議そうな顔をして自分を見る。
『人間』の、男。
旨そうな匂いを漂わせた……
自分に話し掛けた男と一緒にいた女と、一際身体の小さい子供も頭を傾げてこちらを見ている。
「遠慮なんてしなくて良いのよ? こんな時なんだから」
人のよさそうな笑みを浮かべて女もそう勧める。
「いや……いいんだ」

