DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>

(―2―)



アルマの夜は暗い。

終りの気配すら見えない戦争により、悪化した経済が立ち直ることはなく。

首都であるアルマでさえ、街灯が道を照らすことはない。

だが、今日は雲も少なく真円に近い月が出ている分、幾分か普段よりは明るい。

もっとも、ジュードにとってはそれはたいして重要なことではない。

人並み外れた五感を持つ種族にとって、闇が視界を遮ることなど無いのだから。

「お兄さん、お兄さん」

不意に声をかけられジュ―ドは足を止めた。

こんな明るい晩には、少しでも稼ぎを増やそうと、遅くまで道端で商売をする者たちもいる。

石畳の上に擦り切れた薄い布をひき、旅商人がよく持っている古びた四角いカバンに腰を降ろした老婆は

「キャンディーはどうだい? かわいい彼女がいるだろう? きっと喜ぶよ」

そういって足元に並べた幾つかの大きなガラス瓶を指差す。

色とりどりの透明なセロファンに包まれた丸いキャンディーは、最近ではなかなか見かけることもない。

戦争に人手を獲られたためからくる品物不足で、食料品、特に調味料の類は高値になり、甘い物も例外ではなく、店先でもめったに並ぶことがない。

「そうだな……」