黙って、言われたとおりに自分の頭を撫でるジュードの、冷たい手。
目を閉じてそれを感じながら……
ミカエルもまた、過去の記憶をさかのぼり、懐かしい時へと思いをはせる。
まだ、普通の少女だった頃に優しく自分の頭を撫でてくれた手。
もう失ってしまった。
暖かな思い出と愛情とともに自分を守り慈しんでくれた大切な者達。
それを奪った者へ復讐するために、もう二度と自分のために何かが失われることがないように……
その為に機械人形になった。
誰よりも強く、全てを守るため。
そして望んだ強さを、力を、手に入れた。
だけど失ったモノはもう戻らない。
わかっていたはずなのに、それでもやはり求めてしまう。
――その手が欲しい
そう思った。
決して失われることなく、自分を撫でてくれる手が……無性に欲しくて。
(やっぱり、まだ子供なのかしら)
先ほどジュードに投げられた皮肉を思い、ふふ、と胸のうちで笑みをもらしながら。
落ち着いていく鼓動に誘われるようにミカエルは眠りへと身をゆだねる。

