「この花は……お前がもってきたのか?」

黙ってずっと花を見ていたジュードに急に問い掛けられ、ミカエルは回想を断ち切られた。

「そうよ、だってここ殺風景なんだもの」

古い木製のテーブルとイス、ベッドしかない狭い部屋をぐるりと見回し、ミカエルは答える。

ひび割れた灰色の壁が年代を感じさせる、古い建物の一室。

以前ジュードがアルマに居た際に、いくつか使用していたねぐらの一つだというが……二年前に憲兵達の後をつけて最初に見た彼の部屋も似たような感じだった。

きっと他の部屋もこんなもんだろう。

どうやらその美しい容姿とは似合わず、ジュードは住むところには無頓着らしい。

せめて花のひとつでも置きたくなってしまうのは仕方ないじゃないか……

そう思って

「あ……」

思わず声が漏れた。

「なんだ?」

「ん……なんでもない」

怪訝そうな表情のジュードに返しながら、ふふ、と笑みがこぼれた。

花の一つでもなんて、人間らしい……いかにも女らしい思考が自分にあるのがなんだか可笑しく思えたのだ。