その光景に目を奪われた。

長い黒髪をなびかせ、はるかに人智を超えた身のこなしで、みるみるうちに居合わせた憲兵たちを地に這わせる。

最後には何か聞きなれぬ言葉をつぶやき、その意識まで奪った。

最初に見た青から真っ赤に変光した瞳は、不気味と言うよりは妖艶。

(あれが……吸血鬼……)

鼓動が跳ねた。

ここ最近感じなかった、ゾクゾクとする感覚にミカエルは身震いすら覚えた。

機械人形として……ミカエルとなってからというもの、戦場では負け知らず。

否、戦いにすらならない。

一方的な殺戮と化してしまう己の力。

どこかもてあましていたのかもしれない……

気が付くと後を追っていた。