その表情は少し切なげにも見えた。

(あの子の事でも考えてるのかしら)

憂いを含むジュードの青い瞳を横から見つめながら、ミカエルは彼と初めて会った時のことを思う。

事の発端は二年前。

アルマで一人の憲兵が殺されたことがきっかけだった。

異常な捻られ方で折れた腕と胸に大きくあいた穴……そして水分をすっかり失い干からびた死体。

一緒にいた憲兵の証言から、どうやら誰かに殺されたらしいのだが、その殺し方は尋常ではないもの。

たまたま噂を聞きつけたミカエルは興味を持ち、古代文献や魔道を扱う第二研究所へと足を運び、所長に尋ねた。

「もしかして……吸血鬼かしら?」

第二研究所の所長グリエッタ・ローズはしばらく考えを巡らした後、そう答えた。

フードつきの長いローブで身を覆い、いつも目元以外を布を巻きつけ覆っているため、その素顔を知る者は少ない。

だが、僅かな隙間から覗くその黒い瞳は神秘的な色を湛え、目をあわすとなかなかそらせなくなる。

その奇妙な存在感から、彼女は魔女なのではないかという噂もある女性。