「最近、国境付近で戦闘があった場所に花を置いてまわる幽霊がいるらしい」

「花を置く幽霊?」

「そう……まあ、故人の身内が花を手向けることも珍しくはないことなんじゃが……ただ手向けてあるわけじゃない」

店に飾られた白い花に視線を投げ、目を細めながらガーフィールドは続けた。

「墓を作ってくらしい。その辺に落ちてる木の枝なんかで十字の杭をたてて、それに花を供えてく。その作られ方がどこも一緒らしい……」

じっと話を聞いていたアレックスは小首を傾げる。

「幽霊が墓を作る?」

不思議顔のアレックスの顔を見たガーフィールドがふふ、と笑みをこぼした。

「幽霊が墓を作るなんて物理的には無理な話にきまっとる。

たまたま墓を作る姿に出くわした奴がいてな……声をかけようとしたら、次の瞬間には姿を消してたとかで……

それで幽霊だと噂になっとる」

そこでガーフィールドはカウンター越しに、ずずっとアレックスの方へ身を乗り出し、下からアレックスの目をじっとのぞきこみ

「その幽霊が、赤い髪に青い瞳をした少女の姿をしていたらしい」

ニヤリと笑みを浮かべた。