墓石に刻まれた名前を視線でなぞりながらアレックスは続ける。

「今日は、パレードがありました。アイアン・メイデンのです」

アイアン・メイデンの存在は、あの頃はトップシークレット扱いで国民に公表されていなかった。

そんな中で、ルシフェルと任務中に命を落としたボルグは、敵兵との戦闘中の戦死と記録上ではされている。

アレックスや一部のケルベロス隊員は真実を知っている。

暴走した守護天使による無差別殺戮。

だが、アレックスにとってはそれ自体も真実とは言い切れない。

アナベルから聞いた話。

残されたボルグの手紙が、真相として聞かされたことすら偽りであると告げている。

「何が……あったんですか?」

何度目かの問いを繰り返す。

ボルグがルシフェルの暴走時に死んだということは、残されたものや状況から真実とは考えにくい。

だが、ルシフェルの暴走と逃走は真実。