そして、紙を開こうとしていたアレックスの
右手の手首に震える手を重ね
「ねえ……よくわからないの……何が起きたのか……あの人は何をしていて、何があったの?
知りたいと思うのは間違いかしら……?
でも……本当のことを知りたい……あなたにはわからないだろうけど……私は…・…」
ずっと強い光を失うことの無かったアナベルの瞳からすう、と涙が伝う。
「……愛していたの……あの人を」
伝い落ちた涙が白い紙に小さな染みを一つ残し、添えられていた細い手がアレックスの手首からひかれる。
解放された手で、畳まれた紙を広げ……書かれた文に目を通す。
それを見たアレックスは、ほんの少し眉根を寄せ目を細めた後……再びアナベルの方へと顔を上げた。
「すみません、今はっきりと俺が言えることはありません……ただ……」
そこで一度言葉を切り、おもむろに持っていたグラスに口をつけ一気に飲み干し、アレックスは続けた。
「これは、俺も知らなくてはいけないことだと思います……
あなたの気持ち全てを確かに俺は理解できません……でも……」

