一体何が書かれているのかと、それを開こうとすると
「あなたのこと……色々聞いたわ。ずっとあの人、気に掛けてた」
それを制するように声が掛けられた。
「その手紙をあの人が持ってきたのは昨日の深夜よ」
発せられた言葉に、自然と手が止まる。
「え……」
思わずアナベルの顔を見上げる。
「軍服姿でふらりと、一人で来た。今まで軍服のまま来たことなんてなかったのにね」
まっすぐとアレックスの目を見返すアナベルの表情は固い。
「もう何年も此処へ飲みに来てた……でも、一度もそんなことなかったのよ。
紙をくれって、お酒も飲まずにそれを書いて……あなたに渡してくれって……そしてすぐに出て行った」
空のグラスを握るアナベルの手は微かに震えている。
「任務先で死んだって聞いたわ。
あの人と何度かここに来てた兵士さんが知らせてくれたの
でもね、おかしいの。
あの人確かに此処に来たのに…・・・任務先で昨夜戦死が確認されたって……
じゃあ、これを貴方に置いてったのは誰なの?」

