「おごるから、一杯つきあってくれる?」

差し出されたグラスにためらいながら……しかし断りがたいものを感じ、促されるままそれを手する。

それを横目に、先にグラスに口をつけたアナベルは、一息でそれを飲み干した。

「つらいわね……。でも、これで少しは和らげられる」

深く息を吐き出しながらアナベルは、細く形の良い眉を少しゆがめて笑う。

「そう……ですか」

言われて、手元のグラスに目線を落とした。

ゆらゆらと揺れる琥珀の影。

無言でそれを見つめるアレックスを見て、アナベルの笑みはすぐに消えた。

「そうか、あなたは……わからないのね」

小さくつぶやくと、アレックスに背を向け、奥の棚についている引出しの奥から折りたたまれた白い紙を取り出し、アレックスの前に差し出した。

「ボルグがあなたに置いてったものよ」

無造作に畳まれた紙を受け取る。