(―2―)



アナベルと名乗った女に促されるまま、街の裏通りへと足を踏み入れる。

まだ日は落ちきっていないというのに人気の無い、暗く細い路地の奥。

灰色に色あせた建物までたどりつくと、道より下方に見える鉄製のドアへと続く階段をくだり、アナベルは振り返り手招きした。

「私の店よ」

ギイ、と金属のきしむ音に続くようにドアの中へアレックスが身体を滑り込ませると、アナベルは再びドアを閉め内側から鍵をかける。

それとほぼ同時に、日の差さない地下の部屋にほの暗さを残す僅かな照明がつけられ、店内の様子を浮き上がらせた。

「いつもはもう少ししたら店を開けるんだけどね」

ドアと同じく鉄製のカウンタ―にコの字型に囲われた狭い空間の奥の棚には、様々な色の酒瓶と磨かれたグラス。

カウンター前の空間には四つほどの円形のテーブルが置かれている。

小さな酒場。

「座って」

カウンターの奥でショールを取り、髪をゆるく肩の横で束ねたアナベルに促され、カウンターの前に並べられた椅子の一つに腰を降ろすしたアレックスの前にグラスが二つ置かれた。

「飲めるわよね?」

琥珀色の液体が入った瓶を片手にしたアナベルは尋ねながらも、返事は待たずにグラスに液体を注いでいく。