「あなたに、渡すよう預かってるものがあるの」

ショールから解放された艶やかに波打つ栗色の髪が肩に落ちるのを軽く横に振り払う女は、普段街で見かける女たちと比べれば幾分派手な印象の顔をしていた。

「あなたのことは最近よくあの人に聞いてた……イメージどおりで助かったわ」

そう言いながら、彼女は墓地の方へと目線を送る。

「……ボルグさんの……?」

その視線から察してアレックスが問うと、彼女は頷いた。

「ええ、そう。私は彼の古い知人よ」

そう言ってアレックスの方へ手を差し出す。

応えるように差し出したアレックスの右手をぎゅっと握り、女は言った。

「少し、つきあってもらえる?」

強く握られたとはいえ、か弱い女の力……だが、有無を言わせない何かを感じ黙って頷く。

女はそれを見て、少しほっとしたような笑みを見せ

「私はアナベルよ」

そう名乗り再びショールをかぶると、ついてくるようにと目で促し歩き出した。