アレックスを『人』として扱ったのは、きっと彼が初めてだった。
だからこそアレックスは彼に自らをだすことが出来たのだ。
アレックスにとってボルグは『人』そのもので……
自分が彼のようであったならと。
彼のようになることが『人』になるということなのではないかと思っていたのかもしれない……
「何が、あったんですか?」
あまりにも突然に。
話すことすら出来なくなってしまったことを、返らぬ答えに思い知る。
ただただ沈黙を守る墓石に深く頭をさげると、アレックスの顔を仰ぎ見るように花弁を開かせている沢山の花が目に入った。
それを見て、クロードが花を手向けてやってくれと言っていたのを思い出す。
それすら忘れて一直線にここに来ていた自分に気付き、アレックスは再び首を傾げた。
「すみません、花を……忘れていました」
少し困惑した表情を浮かべ、何故忘れていたのかと考えながら。
もう一度頭を下げた後、その場から踵を返し墓地の出口へと向かう。
(花を……)
どうしても自分も手向けねばならない。
何故か強く、そう思う気持ちに押されながら……

