なのに……何故だろう?




それを理解したと同時に襲った、頭を殴られたように反響する耳鳴り。

激しく脈打ち、跳ね上がる鼓動。

今まで感じたことのない体の変化に、アレックスは戸惑い、言葉を失った。

今にも震えが上がってきそうな足元の感覚に、意識して力を込める。

退室を促すクロードに返事を返すことも出来ず、ふらふらと……

この状況で向かうべきであろう場所へとひたすら足を動かした。

途中、ハンカチで目元を押さえながら肩を震わせた黒い服に身を包んだ女とすれ違う。






『……いつも泣くのは女子供ばかりだ』





最後に別れた日に、ボルグがつぶやいた言葉が思い出され。

少しだけ足を止めて、その震える背を見送り……再び墓地の奥へと歩を進めた。