満足げな笑みを見せるコーエンの顔から視線をずらし、ちら、と横目で地に伏した男の亡骸を見やり

「本当に殺してよかったのでしょうか」

ラファエルはつぶやいた。

「人望が厚く、軍での功績も多大な人物だったと聞いてます……事が明らかになれば反意を抱く者もでるのでは……

殺さずとも、もっと上手く利用することも……」

そんなラファエルに、コーエンは驚いたような表情を見せ

「国の意思に逆らう逆賊に利用も何もありはしない……お前がそんなことを気にする必要はない」

ラファエルの表情を伺うように、その瞳を覗き込んだ。

その表情に色はなく、動揺のかけらすら読み取れない。

それに安堵しながらも一応確認するように言葉を重ねた。

「どうした? らしくもない……自国の兵士だったからといって気に病む必要は無い。

裏切る者は敵兵と変わらんのだよ。

お前達の存在のほうが遥かに重要だ。

ましてやルシフェルにバグがおきて逃走してしまった今となっては、尚更情報が漏れることは危険だ」

そう言いながら、ラファエルの肩に置いた手に力を込める。