こんな時に。 そんな不謹慎なことを考えている自分に半ばあきれつつ…… 握っていた短剣を手放す。 足元で カツン、と小さく響いた音を聞きながら思った。 (幸せに……なれただろうに) 叶うことの無い。 少女に訪れるはずだった、架空の未来を思い描き。 ――ズル…… 引き抜かれようとしていた槍の柄を、穴のあいて血まみれな右手で押さえた。