無言で立ち上がり、そこから二、三歩離れる。

腰のベルトに手を伸ばし、そこにあるホルダ―から黒光りする拳銃を抜き取り……記録装置へと向け、構えた。

メイン基盤の位置を狙い引き金を引くと、渇いた金属音と共に小さく火花が散り、プツンとパネルから光が消える。

(これで、いい……)

そこに撮られた記録を見ることができる者はもういない。

薄く、煙が立ち昇るソレに背を向け、ゆっくりとした足取りでトラックを止めている方角へとボルグは向かった。

追って、連れ戻す気はない。

味方をも殺し、そして軍へ戻ることはないだろうルシフェルは、かつての言い伝えの天使そのものに、反逆者の烙印を押されることになるだろう。

(だが……)

落ち行く陽をひたと見据え、思いを巡らす。

(誰が彼女を断罪できる?)

ルシフェルを追い詰め、凶行に走らせたのは何だった?

重い、巨大な剣を持ち、破壊するしかないと思わせた。

全てを奪われた者が、全てを奪う苦痛。



それはあまりに残酷なことではないか……