落ちかけた陽の逆光でその表情は読み取れなかったが、伝う赤い雫が、ルシフェルが今どんな顔をしているか容易に想像させた。
きっと
あの時と同じ……
彼女が全てを失ったあの日に見たそのままの
絶望と怒りと悲しみに覆われた……
まだ、ただの一人の少女であったあの日の……
燃え盛る町で初めて見たときの彼女の表情を思い浮かべながら、子供を抱えて走り去るルシフェルの姿がパネルから消えてゆくのを見送る。
――あの子供は助かるだろう
その名を持つ存在そのものに、彼女は子供の守護天使になる。
そして彼女は……
もう、戻ることはない。
