「……っ」

不意に強く吹いた冷たい風に。

只の傍観者でありながらも、その場の空気に飲み込まれ息一つできず動けずにいた自分に気付く。

震える手で手元のスイッチへと指先を動かし……ボルグは記録動作を停止させた。

これ以上何も記録するものなどない。

コーエンの研究成果の程は言うまでもなく完璧で、かのプロジェクトが産み出した兵器は、コーエンが望む以上に優秀な性能を持つことは十分に証明された。




敵も……



味方すらも……




その場にいた全ての兵士を犠牲にして……




まだ立ち上がることも出来ず、記録動作を止めても尚、その場の映像を映し出すパネルを茫然と見つめるボルグの視界の中……じっと前方を見すえ、たたずんでいたルシフェルの頭が微かに動いた。